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2005.08.26

反対派の論点

 さて、<誇りを持てる国>をテーマとした「つくる会」の教科書。もちろん、賛同者も多くいましたが、それ以上に拒否反応を示す人が多くいたようです。

 反対派の論点は、主に2つありました。「戦争の正当化」と「皇国史観」です。


◆ 戦争の正当化

 扶桑社以外の教科書では、近代に起こった数々の戦争を「日本による侵略戦争」ととらえ、「日本がいかに誤った歴史を重ねてきたか」という視点で描いています。

 しかし、「つくる会」の教科書では、その時代背景を詳しく書き込むことで、「日本政府がなぜ戦争に向かわざるをえなかったのか」と、その“理由”を説明しているのです。たとえば、日露戦争については以下のような記述があります。

「日本の10倍の国家予算と軍事力をもっていたロシアは、満州の兵力を増強し、朝鮮北部に軍事基地を建設した。このまま黙視すれば、ロシアの極東における軍事力は日本が太刀打ちできないほど増強されるのは明らかだった。政府は手遅れになることをおそれて、ロシアとの戦争を始める決意を固めた」

 従来の教科書では、日本はアジア侵略を狙う「悪玉」として描かれていましたが、この扶桑社版を読んだ中学生たちは、おそらく「そうか……日本が開戦に踏み切ったのも苦渋の決断だったんだなあ」という印象を抱くことでしょう。

 また、扶桑社版では、日本が行った数々の戦争を「アジア解放のための戦争」ととらえています。それは、「日本の緒戦の勝利は、東南アジアやインドの人々に独立への夢と勇気を育んだ」「日本の南方進出は、もともと資源の獲得を目的としたものだったが、アジア諸国で始まっていた独立の動きを早める一つのきっかけともなった」という第二次世界大戦についての記述からも明らかです。

 反対派は、こうした記述を「日本による侵略行為を正当化し、戦争を美化するもの」として、激しい批判を加えています。


◆ 皇国史観

 また、扶桑社版の教科書では、「神武天皇の東征」や「天照大神」など、神話的内容が多く登場するのが特徴です。平成14~17年度使用版では、その解説も含めると合計9ページにもわたって数々の神話を紹介しています。

 こうした神話に関する記述は、歴史事実と交互に読み進められる構成となっているため、「神話と史実を混同しかねない」という指摘もなされています。

 たしかに、こうした教科書の構成は、1946年9月、田中耕太郎文相が戦前の反省に立って発言した「史実と神話とを混同したような歴史的な記述を排斥し、厳格に事実に基づかなければならないという方向で歴史教科書の編纂を致さねばならない」という方針に反するものかもしれません。

 反対派は、この教科書を「日本の歴史を天皇中心にとらえ、万世一系の天皇家が日本を支配することが正当とする」皇国史観に基づいたものだと批判しています。

 たしかに、平成14~17年度使用版の扶桑社「新しい歴史教科書」では、昭和天皇を神武天皇から万世一系として受け継がれた第124代と紹介しています。

 では、反対派はなぜ皇国史観を否定するのでしょう。

 天皇を神聖化し、絶対的なものとする皇国史観においては、国民は臣民とされ、その権利や自由がおびやかされる怖れが出てきます。日本が戦争へと向かったのも、そうした歴史観に基づいた国策が原因のひとつとも言われています。

 だからこそ、反対派はこの皇国史観に基づいた扶桑社の教科書を「戦争に向かう教科書」と厳しく批判しているのでしょう(これに対して「つくる会」は、発言者に対して、公開質問状を送るという形で抗議をしていますが)。

 この他にも、反対派が「つくる会」の教科書を批判している点は多くありますが、大きくはこれまで述べてきた2点に分けられると思います。

 僕自身の勉強もかねて、それぞれの立場・論点をまとめてみまたのですが、いかがでしたでしょうか。次回は、これらを踏まえた上で、僕なりの私見を書いてみようと思っています。

2005.08.26 | 固定リンク

 
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