
2005.08.22
「つくる会」の教科書
僕が3週間の学生生活を送っている間に、教育界では大きな動きがありました。
8月12日、東京都杉並区教育委員会は、来年度から区立中学校で使用する歴史教科書に「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーが執筆した扶桑社の教科書の採択を決めたのです。
この採択には反対する声も大きく、抗議行動を起こす人々の姿をテレビでご覧になった方も多いのではないでしょうか。採択反対の署名は、すでに3万人を超えたといいます。
なぜ、この扶桑社の教科書が採択されると、ここまで物議をかもすことになるのか。「新しい歴史教科書をつくる会」とは、いったいどんな団体なのか。この件に関しては様々な意見をお持ちの方が多いようなので、意見は慎重にしなければならないところですが、まずはその背景から「学習」していこうと思います。
「つくる会」設立の端緒となったのは、1996年6月、中学校教科書検定でした。全7社の歴史教科書において、「従軍慰安婦」の記述が登場したのです。これに対し、真っ向から批判を加えたのが、初代会長となる西尾幹二氏や、同じく副会長となる藤岡信勝氏らでした。
「『従軍慰安婦』という言葉は戦前には存在しておらず、日本が国策として慰安婦を強制連行したと証明する公文章も一切発見されていない。また、当時、慰安婦は世界中の軍隊に存在したもので、日本軍の慰安婦のみ記述するのは偏りがある」
こうした主張のもとに、志を同じくする人々が集まり、一年後には会員数6000人を突破したといいます。以降、「つくる会」は活動を活発化させていくことになります。
2000年4月、「つくる会」は、扶桑社から『新しい歴史教科書』、『新しい公民教科書』を出版、文部省に検定申請しましたが、それぞれ137箇所、99箇所に検定意見がつく結果となりました。
そして翌年、「つくる会」は、検定意見のついた箇所を修正し、検定に合格。しかし、各自治体が「つくる会」の教科書を採択した割合は、歴史で0.039%、公民で0.055%に留まる程度でした。
では、「つくる会」の教科書には、他者と比べてどういった特色があるのでしょうか。いくつかの項目に分けて紹介したいと思います。
○南京大虐殺
扶桑社以外の教科書では、非戦闘員の組織的虐殺があったという前提で書かれているが、この事件については現在でも学会で論争中であり、義務教育において使用する教科書に記述すべき内容でない。
○広島への原爆投下
扶桑社以外の教科書では、広島に原爆を落とされたのは「軍都」であったからと結論づけており、「そのような過ちを繰り返さないことが大切」など、原因のすべてが日本にあるように記述している点には問題がある。
○歴史上の英雄
扶桑社以外の教科書では、日本の近代化を進めた初代内閣総理大臣・伊藤博文が韓国侵略の張本人で、暗殺されてしかるべき人物のように描かれ、天下を統一した豊臣秀吉は朝鮮半島を侵略した大悪人として描かれている。
○「支配者」と「民衆」
扶桑社以外の教科書では、支配者と被支配者が対立するという一面的な記述に終始している。一揆・反乱・打ちこわしなどの指導者が「善」で、朝廷・幕府・行政・国家などが「悪」のように描かれているが、歴史をそのように単純な二元論で語ることはできない。
以上の点からもわかるように、「つくる会」の主張は明確です。
「従来の歴史教科書は、必要以上に日本を貶める“自虐史観”に基づいており、それでは子供たちが自分の国に誇りを持つことができない」
「最近の青少年に見られる『自信がない』『消極的』『悲観的』『無気力』『無関心』『無感動』といった傾向も、こうした自虐史観に基づく教科書と無関係ではないのではないか」
そこで、「つくる会」は、日本の子供たちが<この国に誇りを持てるような>歴史教科書づくりを目指したのです。
では、「つくる会」の教科書を、世間はどのように受け止めたのでしょう。次回は、その点について「学習」してみたいと思います。
2005.08.22 | 固定リンク
