
2005.04.29
体罰! セクハラ!! 2
「いまは体罰だけでなく、セクハラにも気を配らなければいけないんですよ」
そう教えてくれたのは、同席していた新宿区の教育指導課長です。
――セクハラ……それは同僚教師に対して、ということですか?
「まあ、そういうケースももちろんあるでしょうが、いま言っているのは子供たちに対しての、です」
――ええっ!? だって、子供たちって7歳から12歳でしょう。それをセクハラって……」
もちろん、そんなことを大マジメに言う小学生などいません。その言葉を口にするのは、やはり保護者たちなのです。
「たとえば私が一年生の女の子を『かわいいねえ。こっちにおいで』と呼び寄せて、ひざに乗せたとするでしょう。その子が家に帰って『学校で教育委員会の知らないオジサンにべたべた触られた』なんて報告をしたら、おそらく私のクビは飛ぶでしょうね」
指導課長は、表情ひとつ変えずに言い放ちます。どうやら冗談などではないようです。
「いちばん気をつけなければいけないのは、高学年の担任を男性教諭が務めているケース。たとえば鉄棒の授業で逆上がりができない子も、お尻をポンと押してあげるとコツを覚えたりするものでしょう。でも、それをやったらセクハラといわれる可能性があるんです」
今年2月。日本テレビ系『世界でいちばん楽しい学校』の取材で、イタリア・ナポリの学校を訪れました。不登校の中学生たちを学校に呼び戻そうと努める「チャンス・プロジェクト」。そこで子供たちと真摯に向き合う先生たちの姿は、いまも僕の心に深く残っています。
そこで先生方が大切にしていたのは、子供たちとのスキンシップ。前に通っていた学校では、問題児扱いされ、阻害されてきた彼らに対して、「私たちは愛しているよ」と意思表示するためです。
ひとたびキレてしまえば、椅子を投げる、先生の胸ぐらをつかむ、と暴力的な行為に走ってしまう彼らですが、先生から肩を組まれたり、抱きしめられているときは、とびきりステキな、そして安心感に満ちた表情を見せてくれるのです。
「子供たちとのスキンシップには、もうひとつ大きな役割があります。それは機嫌のバロメーター。何でもない日には私たちのスキンシップを受け入れる彼らですが、心にトゲがある日はその手を払いのける。それによって、『あ、今日は荒れているな』と細心の注意を払うことができるのです」
ナポリの教室でスキンシップの重要性を目の当たりにしてきただけに、この“セクハラ問題”には呆然とするほかありませんでした。
「でも」と、校長先生は言います。
「すべては子供たち、保護者のみなさんとの信頼関係なんです。普段からコミュニケーションが図れていて、『あの先生はすばらしい』となっていれば、鉄棒を教えるのにお尻を触っても、とくに騒ぎ立てる人はいないでしょう。それが『あの先生はちょっと問題がある』と思われている教師が同じことをすれば、『あれはセクハラじゃないか』となってしまう」
その言葉に、少しは救われた思いがしました。けれども、指導課長がやるせない表情で最後につぶやいた言葉が、いまも耳に残っています。
「子供には触れないようにする。それがいちばん無難ということですよ」
保護者たちの過剰ともいえる“監視の目”。教師たちは、子供を触ることに臆病になっています。そんな教室で、いったい何を伝えられるというのでしょう。
2005.04.29 | 固定リンク | トラックバック (4)
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